2023年10月21日(土)にMDA異分野融合/連携ゼミナール「先端技術と共生」を行いました(MDAセミナーとしても併催)。システム情報系の鈴木健嗣教授と(株)リーバーのCEOである伊藤俊一郎氏をお招きして、講演いただき、また、参加者とのディスカッションを行いました。当日の両氏の講演概要を以下にまとめましたので、ぜひ、ご一読ください。
「先端技術を共生社会に届けるために」鈴木健嗣教授(システム情報系)
MDA研究で求められていることは何か、また、工学分野における共生社会の取組みについて、つくば市におけるスーパーシティの取組みを中心にお話しいただきました。
最初に、MDA異分野融合/連携を考える上で、単なるデータ解析ではなく互いに話し合える力、全く異なる環境でも生きのこり突破する力、さらにグループをまとめる統合力・リーダーシップを身につけてほしいと思って、分野融合型のMDA人材の育成・教育プログラムを進めている。特に、分野融合型数理・データサイエンス・AIの中で最も重要なことは、対象とする現象において最も結果に影響を及ぼすものは何かという本質的なものを見抜いて分野間で対話できることが大事だと考えている。
次に、共生社会の取組みについて、つくば市のスーパーサイエンスシティ構想(スーパーシティ/スマートシティの取組み)の例を踏まえながら、説明いただきました。先端技術に関わるアーキテクトとして、スーパーシティの取組みに関わっており、市長をサポートしながら、まちのビジョンをつくっていくことがアーキテクトの役割だと考えている。特に、住民・大学・NPO・民間企業・中央官庁といった異なるステークホルダーとの合意形成を促し、さらに持続可能なエコシステムにしていくことに力を注いでいる。さらに、アーキテクトとして活動する中で、SDGsとは何か、スマートシティとは何かを考えている。SDGsの本質は、問題を定量化して顕在化して明らかにすることに世界中で取り組んでいることだと考えていて、これはMDAアプローチとも重複するアプローチだといえる。スマートシティは何かというと、困っている人を減らすということだと思っている。例えば、自宅に商品を届ける・投票所ではなく自宅で投票できるようにするといったことができるようになれば、移動困難者が困る場面が減らすことができる。こういったスーパーシティ・スマートシティの取組みは、分野融合型MDA人材にとって、次なる大きなチャレンジだと思っている。分野の専門用語を使っては対話できない他分野や異なる組織の人とコミュニケーションをとりながら、問題解決に突き進める人材になってほしいと期待している。
「日本から発信する新しい医療のかたち」伊藤俊一郎氏((株)リーバー)
ご自身の起業の経験を導入として、人々が安心して暮らせる社会にするため、医療分野で新たな価値創造を行うため、考えていること・取り組んでいることをお話しいただきました。
スタートアップの役割は、新たな価値を生み出し未定を変えることだと考えている。高齢化により患者さんの長期的なケアが困難になっていく状況に危機意識をもち、「世界一多くの心と命を救うヘルスケアインフラを創る」をVisionとして、起業した。実際に、日本国内の医療費は膨らむ一方であり、今後20年間で10兆円規模の圧縮が必要であり、遠隔・在宅医療の活用が求められている。さらに、病院では(入院期間の短期化のため)合理的な医療実施に重きが置かざるうえない実情があるが、在宅医療では長い時間をかけることで個々人との繋がりができ、それぞれの患者さんにあわせた診療・療養指導ができる。また、遠隔・在宅医療の進展は、医療・看護の担い手不足が顕在化する中で、医療過疎地を減らすことにも繋がる。
リーバーでは、こうした在宅医療に加えて、遠隔医療として具体的に、スマホアプリを通じたチャット問診・アドバイスによってトリアージ機能を提供して受診適正化の実現に寄与したり、健康観察アプリによって生徒・保護者とのやりとりをスムーズにして教育現場のDXに貢献したりといった事業を進めている。また、日本だけではなく、アジアの高齢化スピードも早く、日本で培った技術をベトナム・ハノイでも展開している。一緒にこうした挑戦にチャレンジしてくれる人を増やしていきたい。