空からの関わりを考える:航空機を利用した関係人口
全国における訪問型関係人口の活動実態 -条件不利地域への関わり拡大に向けて-

ケース
2026-01-09

 研究の概要

 背景と課題

  • 我が国における大きな課題として人口減少や少子高齢化が挙げられる。これらの課題に対して、近年「関係人口」という概念が注目されている。関係人口とは、「移住した定住人口でもなく、観光に来た交流人口でもない、特定の地域に継続的に多様な形で関わる人」のことを指し、観光等で単発的に訪れる交流人口と地域に実際に住んでいる定住人口の中間的な位置づけとされている。
  • 関係人口の拡大にあたっては国としての取り組みも進んでおり、2032年度を目途に現在の約1.5倍に相当する3000万人にまで関係人口を拡大する目標が掲げられている。しかしながら、関係人口の多くは居住地周辺の関わりに留まっている。そのため、居住者の多い大都市圏周辺の地域では関係人口を獲得できるものの、大都市圏から離れた担い手を必要としている地域では関係人口が手薄な状態となっていると言える。
  • 以上より、関係人口の拡大にあたっては、遠方地域や条件不利地域への関わりを拡大していく観点も必要である。そこで本研究では、遠方地域や島嶼部を訪問している航空機を利用した関係人口に着目し、既存関係人口の継続と新規層の創出に必要なことを明らかにする。

 使用データ

  • 本研究では、航空機を利用した関係人口の動きを捉えるためにJALマイレージバンク会員に対して行った「空の旅と旅先での活動に関する調査」を用いた。本調査は国土交通省が実施した「地域との関わりについてのアンケート」を参考に独自設計したものである。

 データ分析

航空機を利用した関係人口の継続と新規層獲得のそれぞれに向けた重要な改善施策を明らかにするため、関係人口に該当するか否かを被説明変数とした数量化Ⅱ類分析を行った。説明変数には、どのような特性を持つ人物が該当しやすいかを把握するために属性情報、活動する際の障壁をみるために「関わりを深めていくために必要な内容」の調査項目を用いた。ここでは結果の一部を示す。

航空機を利用した関係人口の継続に向けて

  • 関わりを深めていくために必要な内容の中で、「増便やダイヤの改善」「混雑の緩和」を挙げている者ほど有意に関係人口に該当することが明らかとなった。すなわち、これらの改善は既存の関係人口が関わりを継続していくためにより効果的な施策であると考えられる。
  • また、「地域との関わりを含むパッケージ提供」を挙げている者においても、有意に関係人口に該当しやすいことが明らかとなった。航空機の利用と地域への関わりがセットになることで、手続きの省力化や新たな関わり先の発見につながると考えられる。
  • また、「案内所やコンセェルジュの存在」を挙げている者ほど、有意に関係人口に該当しやすいことが明らかとなった。これは、関わりを持つ以前にはその必要性をあまり認識していないものの、関わりを持つ人にとっては重要な内容であることを示している。これまで観光等で訪れる交流人口に対しては、観光業社が旅行の催行を通して「地域を知るきっかけづくり」を多く行ってきているが、一度関係人口となった人に対しても、より関わりを深めたり継続しやすくしたりといった役割を担う主体が今後必要であると考えられる。

航空機を利用した関係人口の新規創出に向け

  • 世帯年収に着目すると、年収が高いほど該当しやすい傾向にある。航空機を利用した関係人口として定期的な関わりを持つには相応のコストを要することが考えられる。
  • 「仕事などでの時間的余裕の確保」においては、関係人口非該当者であるほど求めている結果となった。まだ関わりを持っていない人の視点では、時間的な制約が新しく関わりを持つことに対するハードルになっていることが考えられる。

 成果と提案

  • 本研究では、関係人口の拡大に向けて、遠方や条件不利地域に関わりをもつ航空機を利用した関係人口に着目し、その継続と新規層の創出に必要な内容を明らかにした。
  • はじめに、航空機を利用した関係人口の属性傾向として、世帯年収が比較的高いことが明らかとなった。関わりには相応のコストがかかることが考えられ、離島割引のような制度面からの支援も今後は考えられる。
  • 関わりの創出を増やすためのアプローチの一つとして、新規層の獲得が考えられる。分析の結果、航空機を利用した関係人口の非該当者ほど、「仕事などでの時間的余裕の確保」を必要としていることが明らかとなった。例えば、新規の関係人口獲得に向けては、個人ではなく組織レベルでの働き方への理解が必要となる。近年ではフレックスタイム制やワーケーションといった柔軟な働き方も増えており、これらの普及が関わりの拡大にも貢献し得る可能性がある。
  • 関わりの創出を増やすためのもう一つのアプローチとして、既存関係人口の関わりの継続が考えられる。分析の結果、航空機を利用した既存関係人口ほど「増便やダイヤの改善」「混雑の緩和」「地位との関わりを含むパッケージ提供」を必要としていることが明らかとなった。例えば、増便やダイヤの改善により、関わり先での活動時間を長くしたり、活動の幅を広げたりできる可能性がある。また、関わり先地域内の拠点整備や交通事業者の連携だけではなく、地域間・地域内交通事業者の円滑な接続、二次交通の整備といったセットでの連携を図ることで、関係人口が活動先までスムーズにアクセスできる仕組みを整えることが重要である。
  • この記事は、下記の論文の一部を要約したものです。
    森成諒 (2025) 全国における訪問型関係人口の活動実態 -条件不利地域への関わり拡大に向けて-、 2024年度 筑波大学大学院 博士課程 理工情報生命学術院 システム情報工学研究群 修士論文

 後記

  • 修士の2年間行ってきた研究活動を通して、色々な学びや気づきがありました。研究成果を得るために必要なことは、優れた能力ではなく、毎日研究室に来てコツコツと取り組むことだと思います。私は大学院から入学したので当初は不安でしたが、毎日研究室に通うことを心がけていました。毎日研究室に通っていると、自然と周囲と話す回数も増え、研究の相談もしやすくなります。また、研究を進める機会もつかみやすくなります。単純なことかもしれませんが、何事においても大切なことだと思います。
  • 大学院への進学で迷っていれば、研究室見学や周囲への相談を経て、是非一歩踏み出してみてください。大変なことの方が多いですが、自身の成長につながると思います。
  • 本研究を実施するにあたって、日本航空株式会社の研究助成をいただいた。記して謝意を申し上げる。