1.はじめに
国土交通省の研究により、世界の代表的な河川と比べると、日本の河川は上流から下流への勾配が急である。また、日本の年間平均降水量は約世界の2倍で、特に梅雨期と台風期に集中している。さらに、日本の都市は主に洪水の河川水位より低いため、洪水の被害を受けやすい状態である。洪水が発生する場合に、より迅速で安全な避難することが重要な課題となった。
2.本研究の目的
本研究で、河川氾濫の避難勧告として最適な避難経路を見つけることに着目する。さらに、人の属性(年齢)から考えて、避難経路の距離と傾斜を考慮し、最適避難経路の提案を目指す。具体的に、若者は直線距離を重視し、素早く避難できる経路を探す。老人と子供のため、傾斜の少ない道、つまり実際距離を重視し、避難経路を提案する。
3.モデルの説明
3.1 パラメーター
V: すべての地域の集合
O: 避難所以外の地域の集合
D: 避難所地域の集合
s: 避難所のスタート地点
𝑒𝑖,𝑗: 二つの地域の間に道が繋がているかどうかを表す集合, ∀𝑖, 𝑗 ∈ V
𝑒𝑖,𝑗=1 繋がっている場合
𝑒𝑖,𝑗=0 繋がっていない場合
𝑑𝑖,𝑗: 二つの地域の距離を表す集合, ∀𝑖, 𝑗 ∈ 𝑉
𝛼: 直線距離と実際距離のトレードオフの係数
𝑤𝑖,𝑗: 二つの地域の傾斜率を表す集合, ∀𝑖, 𝑗 ∈ V
3.2 変数
𝑥𝑖,𝑗: 1 or 0, 地域𝑖と𝑗間の道を通過するかどうか, ∀𝑖, 𝑗 ∈ V
3.3 目的関数
3.4 制約条件
4.対象地域
今回つくば市の桜川流域を対象地域として扱っている。下のグラフで示したように、合計25個の地域を考えた。その中に三つの避難場所を設定した。各地域間の距離と傾斜率など全部現実のデータを使用した。
5.計算機実験と考察
今回の実験で目的関数におけるαの値を変更しながら、対象地域のネットワークにおける各地点における提案ルートの変化を観察する。
スタート地点は1と10にした。それぞれの結果は以下のテーブルとグラフで示された。
トレードオフの係数αの変更により、同じスタート地点でも異なる避難経路の結果が出た。つまり、実際距離と直線距離はどちらかを重視することにより、最適避難経路が変わることを明らかにした。
距離差が大きくなかったため、ルートを変えて大きく距離が変化する地点ではどちらを重視しても変化がないと考えられる。また、傾斜率重視の時でも、多くの地点では距離重視の時とルートが変わらなかったため、傾斜率より距離のほうが重みが大きくなっていると考えられる。
6.おわりに
今回、つくば市の桜川流域に河川氾濫が発生した場合を想定し、避難勧告時における距離と傾斜を考慮した最適避難経路の提案のため、数理モデルを組む、計算機実験を実行した。実験結果により、経路の傾斜を重視程度により、最適避難経路の提案が変わることを明らかにした。
今後の展望として、他の地域のデータを収集し、避難経路の傾斜による避難経路がどうやって変わることをさらに調べる。また、人の属性だけでなく、避難時における状況も考慮した上、避難勧告の提案を目指す。
アタッチメント