【2025年度2班】でんチュ、して
つくば市研究学園地区の無電柱化を進める優先順位と、電柱広告の再配置について

演習/連携
2026-02-19

背景と課題

電柱は全国に約3,600万本存在し、現在も年間約4.5万本が新設されている[1]。電柱は本来の送配電・通信といった機能に加え、電柱広告としても活用されている。一方で、景観や安全性への悪影響や、災害時に倒壊が起こり道路を閉塞するリスクなど、多くのデメリットが指摘されており、近年電柱の地中化による無電柱化が推進されている。しかしながら、無電柱化には莫大な費用が必要であり、広域の無電柱化は困難な現状にある。

以上の背景を踏まえ、本研究では、無電柱化の優先区域の検討と、現在利用されている電柱広告についての調査・分析に基づいた電柱広告の再配置の検討を行う。

目的

本研究では以下の3つの目的を定めた。

  1. 電柱配置と電柱広告の現状を把握・分析
  2. 災害リスク分析によるつくば市の無電柱化優先区域の決定
  3. 無電柱化優先区域の電柱広告の再配置、非優先区域の電柱の活用方法の提案

データ

目的1の電柱配置と電柱広告の現状を把握するため、現地調査とヒアリング調査を行った。

現地調査

電柱広告掲出の現状を把握するために、現地調査を行った。対象地域は、電柱密度の高い、竹園・東新井・千現・二の宮・松代・大角豆(一部)・稲荷前・梅園・東である。

まず、現地で電柱広告を確認し、調査事項をMicrosoft Formsに入力した。次に、Google Maps上で施設の座標を特定し、Excelで整理した。

調査事項
  • 電柱番号
  • 広告を掲出している施設の名称
  • 広告の掲出主の業種
  • 住所の表記があるか
  • 電話番号の表記があるか
  • 電柱広告の付いている向き
  • 付帯情報が付いているか
  • 形式(図 1、図 2)
  • 複数の広告が付いているか
  • 広告は文字のみか
  • 矢印が付いているか
図 1 巻き広告の例(東で撮影)
図2 掛広告の例(東で撮影)

つくば市へのヒアリング

無電柱化事業に関する自治体の認識について、つくば市にヒアリングを行った。その結果、開発面積1ha以上の民間開発に対し無電柱化を要請する方針であるが、受益者が地域限定的であるため、市税を大規模に投入してエリアを拡大する予定はないことが明らかとなった。

木下陽平先生へのヒアリング

災害時の電柱倒壊リスク評価について、筑波大学システム情報系の木下陽平先生にヒアリングを行った。電柱倒壊と避難の関係については、倒壊時でも歩行者の通行は可能な場合が多いため、主要なリスクは避難者の移動阻害よりも緊急車両の通行不能による二次被害にあると捉えられるという見解が示された。

東電タウンプランニングへのヒアリング

電柱広告掲出の実情について、東電タウンプランニング株式会社にヒアリングを行った。その結果、広告の設置場所は、広告主の要望を基本としつつ、視認性や人流に関する現地調査を行った上で決定されること、広告のデザイン面では行政や専門家と連携して景観との調和を重視していること、無電柱化が進んだ場合は基本的に移設で対応するが、誘導ルートの変化に伴い看板の作り直しや解約となるケースもあることなどが明らかとなった。

分析

現地調査およびヒアリング調査の結果を踏まえ、目的2、3の無電柱化区域および区域に応じた電柱の活用方法を検討するため、次の分析を行うこととした。

道路閉塞率の分析

東電タウンプランニング「電柱位置情報データ」(2018年)より電柱データ、住友電工「拡張版全国デジタル道路地図データベース」(2020年)より道路データを用いて、災害発生による電柱倒壊時の道路閉塞率の算出をつくば市全域対象に行う。電柱倒壊率を0.5%、2%、5%と設定し、電柱倒壊により残される道路幅が2.5m、5m、7.5m以下となる確率を計算する。Pythonで計算を実行し、ArcGIS Proにて表示する。緊急輸送道路は電柱倒壊率5%、残される道路幅7.5m以下となる確率を、住宅地には電柱倒壊率5%、残す道路幅2.5m以下となる確率を算出する。

電柱広告と通行量の関係の分析

まず、Agoop「ポイント型流動人口データ」(2023年4月,茨城県)のログのうち、水平方向の精度が10m以内、かつ前後1分間隔で取得されたログと、現地調査で得られたデータを東電タウンプランニング「電柱位置情報データ」(2018年)に統合して作った電柱広告データを用いて、ログから最も近い電柱の電柱番号とログ-最寄り電柱間の距離を算出する。次に電柱までの距離が10m以下のログに絞り込み、電柱番号ごとにログの数をカウントする。それをもとに電柱の属性(形式・業種)ごとの通行量を比較する。なお、一連の分析はPythonを用いて行う。

電柱広告の配置の分析

広告を「誘導案内広告」と「認知広告」(施設の知名度向上を目的とする広告。)の2種類に分類し、施設との位置関係を分析する。

広告媒体以外の電柱の活用方法に関する分析

無電柱化が困難な区域を前提とし、電柱の代替的価値について事例分析を行う。つくば市の「広告付きバス停上屋整備事業」[9]や、関西電力の「電柱アートデザインコンクール」[10]を対象として、電柱や類似の付帯構造物が景観形成や地域イメージ向上など副次的な効果をもたらす可能性を分析する。さらに、東電タウンプランニングの「地域貢献型広告」[11]と、府中市におけるNTT東日本の電柱を用いた避難所案内の事例[12]について取り上げ、広告媒体と公共情報を併用し複合的に活用することについて検討する。

結果

分析の結果を次に示す。

道路閉塞率の分析結果

全体の傾向

つくば市全体の道路閉塞率は低水準であり、東西大通りは計画段階で無電柱化されており閉塞率は0を示した。一方で緊急輸送道路の一部や研究学園地区外の住宅街の一部では高い閉塞率の値を示した(図3)。

緊急輸送道路

第1次緊急輸送道路である国道354号線は多くの区間で高い閉塞率の値を示した(図4)。また第2次緊急輸送道路である県道24号線は、主要防災拠点である桜総合体育館へ接続する区間で高い閉塞率の値を示した(図5)。

国道354号線は片側一車線の道路の両側に電柱が立っており、無電柱化せずとも道路の片側のみへの電柱の制限等の何らかの電柱倒壊リスク対策が求められると考えられる。

図 3 道路閉塞率(電柱倒壊率5%, 道路幅7.5m以下)-調査範囲
(背景地図出典:Esri, Intermap, NASA, NGA, USGS)
図 4 国道354号線-拡大図
(背景地図出典:Esri, Intermap, NASA, NGA, USGS)
図 5 県道24号線-拡大図
(背景地図出典:Esri, Intermap, NASA, NGA, USGS)
 住宅街

研究学園地区内の住宅街は、東新井などのように街区が計画的に整備されており(図6)、閉塞率の低い道路(幹線道路や片側のみに電柱が設置された道路(図7))への接続性が高い。一方で研究学園地区外では、上ノ室などのように地域内の主要道が高い閉塞率の値を示した(図8)。こうした地域は住民の孤立を招く可能性が高く、電柱の片側設置のみへの制限等何らかの対策が求められると考えられる。

図6 東新井-拡大図
(背景地図出典:Esri, Intermap, NASA, NGA, USGS)
図7 東新井-道路閉塞率の低い道路
(出典:Mapillary)
図8 上ノ室-拡大図
(背景地図出典:Esri, Intermap, NASA, NGA, USGS)

電柱広告と通行量の関係

広告が掲出されている電柱は掲出されていない電柱に比べて通行量が多いことが分かる。また、巻き広告に比べて掛広告の方がやや通行量が多いことも分かる(図9)。

図9 電柱から10m以内の通過人数(形式別)

業種によって広告を掲出している電柱の通行量に差が見られる。特に、不動産、自動車販売店、法律事務所、新聞の電柱広告で通行量が多いことが分かる(図10)。

これらの業種は、通行量の多い国道354号線沿いの電柱に多く広告を掲出しており、その影響が強く出ているものと考えられる。

電柱広告の配置

図11、図12は、A医院とB歯科の認知広告・誘導広告の配置を示している。施設は電柱広告を配置する際に特定の道路や地域に電柱広告を設置し、そこから施設まで誘導を行うために誘導案内広告を設置していることが分かる。一方で認知広告はより広い範囲に設置されることが多いことが読み取れる。

図11 A医院の誘導案内、認知広告と施設の位置関係
(背景地図出典:Esri, Intermap, NASA, NGA, USGS)
図12 B歯科の誘導案内、認知広告と施設の位置関係
(背景地図出典:Esri, Intermap, NASA, NGA, USGS)

無電柱化非優先区域における電柱の活用方法

無電柱化非優先区域においては、電柱は広告以外の活用についても検討する価値のあるインフラであると考えられる。筑波研究学園都市に関する豆知識や研究情報を掲示することで、公共性の高い情報発信を行うことが可能であると考えられる(図13)。また、地域貢献型広告を活用することで、広告と公共情報を併記した低コストの情報発信が可能になると考えられる。

図 13 情報発信掲示の具体例
(canvaで作成)

提言

無電柱化の推進にあたっては、災害時の機能維持と地域特性を踏まえた優先順位付けが重要であると考えられる。具体的には、緊急輸送道路である国道354号線および県道24号線の一部について、無電柱化または電柱の片側設置を進めるとともに、研究学園地区外に位置し災害時に孤立する可能性の高い住宅街においても、同様の整備を優先的に検討すべきである。また、無電柱化に伴い撤去対象となる電柱広告については、同一路線内で閉塞率が比較的低く、かつ未設置の電柱へ再配置することで、特に重要性の高い誘導・案内広告を優先的に確保することが望ましい。さらに、無電柱化非優先区域に残る電柱については、広告媒体としての利用にとどまらず、人々の関心を引くような公共的情報発信や、防災・防犯情報、公共施設案内などを付帯的に掲示することで、地域に資する多機能なインフラとして活用する価値があると考えられる。

レファレンス

[1] 国土交通省. 無電柱化の種類, https://www.mlit.go.jp/road/road/traffic/chicyuka/chi_13_03.html, 最終閲覧 2026/01/04.
[2] 国土交通省(2017). 無電柱化の現状. 無電柱化推進のあり方検討委員会第1回委員会資料, https://www.mlit.go.jp/road/ir/ir-council/chicyuka/pdf03/09.pdf, 最終閲覧 2026/01/04.
[3] 国土交通省. 無電柱化の概要と事務手続き, https://www.mlit.go.jp/road/road/traffic/chicyuka/gaijimu_03.htm, 最終閲覧 2026/01/04.
[4] つくば市(2023). 新住宅市街地開発事業, https://www.city.tsukuba.lg.jp/soshikikarasagasu/toshikeikakubutoshikeikakuka/gyomuannai/4/4/1/2/1002081.html, 最終閲覧 2026/01/03.
[5] 国土交通省(2021).「無電柱化推進計画」の策定について, https://www.mlit.go.jp/road/road/traffic/chicyuka/chi_21.html, 最終閲覧 2026/01/03.
[6] 船越康・田宮圭祐・山添貴哉・TU NIANZHI(2019). 大規模災害時における電柱倒壊リスク分析, 筑波大学リスク工学グループ演習.
[7] 佐藤佳乃・石井儀光・大澤義明(2025). 緊急輸送道路網の機能低下をもたらす空き家倒壊の影響. 都市計画論文集, 60(3), 1674-1681.
[8] 東京電力パワーグリッド. 電柱等を活用した新たな取組み, https://www.tepco.co.jp/pg/consignment/liberalization/new-service/pole-newplan.html, 最終閲覧 2026/01/04.
[9] つくば市(2023). 広告付きバス停上屋における景観の取り組み, https://www.city.tsukuba.lg.jp/soshikikarasagasu/toshikeikakubutoshikeikakuka/gyomuannai/4/2/1014070.html, 最終閲覧 2026/01/04.
[10] 関電サービス株式会社. 電柱広告・屋外広告(電柱アートデザインコンクール), https://www.kandensv.co.jp/service/appeal/koukoku/concours/index.html, 最終閲覧 2026/01/04.
[11] 東電タウンプランニング. 地域貢献型広告, https://denchu-koukoku.com/local/, 最終閲覧2026/01/03.
[12] 府中市(2021). 電柱を活用した避難案内板の設置について, https://www.city.fuchu.tokyo.jp/bosaibohan/saigai/fuusuigai/denntyuu.html, 最終閲覧 2026/01/03.