【2020年度1班】COCOA de Go To~ほっと安心できる世の中に~

演習/連携
2021-01-26

課題

2020年初めから⽇本でも新型コロナウイルス感染症の感染が拡がっている。
このウイルスは感染力が強く、主に接触感染と飛沫感染の2つの方法で感染が広がっていると考えられている。現在、日本ではロックダウン等の積極的な感染拡大対策は行われておらず、この現状を踏まえると感染拡大を防ぐためには一人一人の予防に加えて、感染者と濃厚接触者を早く特定し、行動の自粛を促すことや、隔離することが必要である。そして濃厚接触者の特定のために開発されたアプリケーションが新型コロナウイルス接触確認アプリ(COCOA)である。
私たちの調査の目的は積極的な感染拡大予防政策が行われていない現状でいかに感染拡大を防いでいくのかについて調べることである。

データ

6月19日から運用を開始したCOCOAであるが、その認知度や普及率は未だ不十分であると思われる。我々は、COCOAの普及率を高めるにはどうしたらよいのか疑問に思い、普及率を高める方法として二つの案を考えた。

一つ目は、ポイントなどのインセンティブを付与することでCOCOAのインストールを促す案である。COCOAには濃厚接触者と特定された場合にいち早く検査を受けられるというメリットはあるものの、ポイント導入という多くの人にとっても分かりやすいメリットを導入すれば、COCOAに関心を抱く人が増えるのではないか。

二つ目は、Go To キャンペーンを利用する際にCOCOAのインストールを義務化する方法である。自粛により停滞した経済活動を促進するために、GoToキャンペーンが発足している。この企画によって人の移動や集中の機会が増え、ウイルスに対する危機意識の低下を招いているのではないか。また、最近の第三波と報道される感染の拡大は、GoToキャンペーンに起因するものとの指摘やそれを否定する見解も報道され、新型コロナウイルス感染に対する人々のリスク認知に留意する必要があるだろう。GoToキャンペーン実施下でもできるだけ感染拡大を抑制するための方策が必要である。そこで、GoToキャンペーン利用時にCOCOAのインストールや継続利用が必須となれば、感染を防ぐ有効な手段のひとつになるのではと考えた。

本演習では提案した以上の二つの案がCOCOAのインストールの促進に効果を示すのかを検証する。

本演習の作業の流れは以下の図で示すとおりである。

図1 作業フレーム

分析

我々はまず、ブレインストーミングを用いて意見を出し合い、KJ法を用いて新型コロナウイルス感染症に関する問題を書き出した。主に挙げられた問題は、大学内の問題、学生の問題、社会全体の問題、経済の問題、ライフスタイルの問題、スポーツ・文化の問題、防災の問題、国の施策に関する問題である。その中でCOCOAとGo To キャンペーンに関する意見について分類した。(図1)

図2 KJ法によって新型コロナウイルスに関する問題を列挙

そして、新型コロナウイルス感染症とGo To キャンペーン、接触確認アプリCOCOAへの認識を把握することを目的とし、KJ法によって挙がった以下の仮説を検証していく。

  1. Go To キャンペーンの登場により、以前より新型コロナウイルス感染症に対する危機感が低下し、感染対策が行われなくなった
  2. 「自分が新型コロナウイルスに感染する可能性は低い」と考えている人ほどGo To キャンペーンを利用している、あるいは利用したいと考えている
  3. Go To キャンペーン申請時にCOCOAのインストール・利用が義務付けられるとしたら、COCOAをインストールする人が増加する
  4. COCOAを継続的に利用することでポイントなどのインセンティブを得られるとしたら、COCOAの普及率は向上する

結果

仮説1に関して下の図を見ると、どの世代も多くは「変わっていない」と回答しているが、特徴的なのは20代の人は「変わってない」以外の選択肢にも多く回答していることである。Go To キャンペーンを契機として、新型コロナウイルス感染の脅威が少なくなったと判断している人が少なからずいることが分かる。この原因としては、若年層の致死率、重症化率が低いとの報道がされており、本アンケート調査でもその傾向が窺われるため、とも考えられるが定かではない。

図3 新型コロナウイルスに対する意識変化

仮説2に関してはGo To トラベルとGo To イートの両方について、学生も教職員も、おおむね感染リスク認知が低い回答者ほどキャンペーンへの参加意欲は高く回答した。感染リスク認知の高さとGo To キャンペーンへの参加意欲の高さには負の相関があり、仮説が成立しているといえる。また学生は、感染リスク認知が高くてもキャンペーンへの参加意思を教職員よりも高く示している。これについて、学生は新型コロナウイルスへの感染を教職員より恐れていない、一定の感染リスクを感じていてもキャンペーンによる感染リスクは高く捉えていない、などの理由が考えられる。

仮説3に関してはCOCOAインストール済の人は当然として、COCOAインストール義務の有無にかかわらずGo Toキャンペーンを利用しない人を除けば、ほとんどの人が、Go Toキャンペーンを利用するに当たってCOCOAをインストールすることを受容しており、仮説は十分に成り立つと考えられる。

図6 COCOAインストール状況とインセンティブ付与による利用意思

仮説4に関してCOCOAインストールに対して既に積極的な人たちほど、ポイント付与に対しての興味があり、これに対してCOCOAインストールに対して消極的な人たちにおいてはあまりポイント付与に関して大多数の人が興味を示しているわけではない結果となっている。このような結果から、新型コロナウイルス感染症に対してリスクが高いと感じている人ほどCOCOAが自分に必要かどうかがわかっているということが考えられる。

図7 ポイント付与制度によるインストール受容性

提言

以上のアンケート調査、及び仮説の検証結果から、COCOAインストール促進に向けた提言を掲げる。COCOAインストール促進において、重要なことは他サービスとの連携であるということである。本演習では流通しているポイント、及びGo To キャンペーンを他サービスの例として取り上げたが、どちらも連携を取り入れることでCOCOAインストール受容性が上がるという結果が得られた。よって、他サービスとCOCOAの連携を検討する価値は大いにあると考えられる。

COCOA普及率が低迷している現状を変えるべくGo To キャンペーンやポイント付与をCOCOAインストールの動機として、インストール促進を目指していたが、COCOAの普及率が低迷していることには様々な要因があると考えられる。例えば、COCOAに関する報道の少なさや、新型コロナウイルス感染症に対する危機感の薄まりなどが考えられる要因である。これらの要因を改善していくようなアプローチもCOCOAインストール促進に向けて求められる。

また、本演習で行ったアンケート調査において、インセンティブ付与におけるCOCOAインストール受容性を調べる設問では具体的な数字を用いたことで架空の世界を想像させ、回答者がバイアスを持った状態での回答が得られてしまったため、正確な結果は得られていないと考える。この点に注意したアンケートの作成のもとでの調査が今後は必要になる。

謝辞・参考文献

謝辞

アンケート調査にご協力いただいた、筑波大学関係者の皆様に心より感謝申し上げます。

そして、本演習においてたくさんのご指導をいただきました、糸井川 栄一 先生、TAの蒲倉 光さんに感謝申し上げます。

参考文献

  1. 「前橋市;新型コロナウイルス接触確認アプリの運用が開始されました」https://www.city.maebashi.gunma.jp/kurashi_tetsuzuki/covid19_info/1/1/24514.html(最終閲覧: 2020.11)
  2. 『YAHOO!ニュース;ダウンロード数は人口の約14%だけど効果は?接触確認アプリ「COCOA」』https://news.yahoo.co.jp/articles/4eaa1f8b273ec1c2877856aad4aec0b8f86e5991(最終閲覧:2020.11)
  3. 「AdverTimes;広告ブロックに自主基準をグーグル、業界各社と対話の構え」https://www.advertimes.com/20151104/article208593/(最終閲覧:2020.11)
  4. 厚生労働省;新型コロナウイルス感染症の国内発生動向」(最終閲覧:2020.12)
  5. 「厚生労働省;新型コロナウイルス接触確認アプリ(COCOA)」https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000691700.pdf(最終閲覧:2020.11)
  6. 国土交通省;令和2年度国土交通省関係補正予算の概要」(最終閲覧:2020.11)
  7. 「厚生労働省;接触確認アプリ利用者向けQ&A」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/covid19_qa_kanrenkigyou_00009.html(最終閲覧:2020.11)