【2020年度4班】Withコロナ時代 オンライン診療をあたりまえに

演習/連携
2021-01-26

課題

新型コロナウイルスは現在も流行が続き、感染拡大は医療機関へ悪影響を及ぼしている。その一つの対応策としてオンライン診療が考えられる。オンライン診療は新型コロナウイルスの対策だけでなく、交通格差や混雑の問題を解消でき、普及することで多くの人にメリットがあると考えらえる。しかし現状としてオンライン診療は認知されているものの利用率は約1.9%にとどまっている[1]

私たちはオンライン診療普及の阻害要因を解明し、その対策を検討・実行することを目的とする。さらに調査の結果を踏まえ、つくば市に適したオンライン診療システムを提案する。

データ

目的を達成するため、まず阻害要因を解明するための調査を行った。

その一つが、医療関係者へのヒアリングである。筑波大学医学医療系の鶴嶋英夫准教授にヒアリングを行わせていただいた。鶴嶋先生は担当教員の鈴木先生の知り合いであることもあり、協力の依頼をすることができた。このヒアリングでは、オンライン診療のメリットやデメリット、現状と課題、そしてこれからのありかたについて明らかにすることを目的とした。
また、阻害要因を解明するために既存のアンケート調査の収集も行った。これらの調査を分析して阻害要因を解明した。

阻害要因を解明した後は、その要因への対策を考えるために複数の調査を行った。

まず、オンライン診療のメリットが要因への対策に必要となったため、メリットを明らかにするための調査を行った。そのために、まず既存のアンケート調査の収集を追加で行った。収集したアンケートを分析してメリットを明らかにすることが目的だ。
また、オンライン診療のモデルケースの調査も行った。これは、モデルケースを分析することでメリットが見えてくるだろうといった理由で行った。

さらに、つくば市に適したオンライン診療のシステムを提案するために、つくば市に関する調査を行った。調査はArcGISを用いて行った。

分析

データでも紹介した調査の分析方法を以下に示す。

ヒアリングの分析

鶴嶋先生にご協力いただいたヒアリングの内容から、オンライン診療のメリットやデメリット等を分析した。

既存調査の分析

患者や医師を対象に実施された既存のアンケート結果を分析し、オンライン診療普及の阻害要因や、オンライン診療のメリット等を分析した。分析したアンケートは以下の2つである。

かかりつけ医機能等の外来医療に係る評価等に関する実施状況調査(中央保健医療協議会)[2]
オンライン診療に関する調査(MMD研究所)[3]
前者はオンライン診療の阻害要因解明のための調査として、後者は阻害要因の対策検討のための調査として行った。

モデルケースによる分析

モデルケースを用いてオンライン診療における患者のメリットを分析した。いた―ネットにより収集したモデルケース[4]を分析した。

つくば市の地域分析

つくば市はどういう面でオンライン診療が向いているのか、またどういった問題を抱えているのかを明らかにするためGISを用いて以下の分析を行った。

  • 人口の分布
  • 高齢化率
  • 病院へのアクセス性
  • 公共交通へのアクセス性

結果

ヒアリングの分析の結果

ヒアリングを分析した結果、オンライン診療のデメリットとして以下の3つが挙げられることがわかった。

  • 診療所の収入の減少
  • 診療の質が低下する可能性
  • セキュリティ上の危険

一方で、メリットとして2つが挙げられることがわかった。

  • 感染症予防が期待できる
  • 通院時間を無くすことができる
既存調査の分析の結果

かかりつけ医機能等の外来医療に係る評価等に関する実施状況調査[2]

オンライン診療を受診していない患者に行った設問より、受けたことがない理由として医師からオンライン診療を提案されたことがないといった回答が多いことがわかった(図1)。

図1 オンライン診療を受けたことがない理由 調査元より引用[2]

一方で、オンライン診療を実施しない理由を医師に尋ねた設問では、患者からの希望がないためといった回答が多い(図2)。

図2 オンライン診療を実施しない理由 調査元より引用[2]

すなわち、医師は患者に言われないのでオンライン診療を行わず、患者は医師に言われないのでオンライン診療を受けないといった状況になっている。

オンライン診療に関する調査[3]

オンライン診療を利用したきっかけとして、新型コロナウイルス対策以外にも効率の面から利用した人が多いことがわかった(図3)。

図3 オンライン診療を利用したきっかけ MMD研究所より引用[3]

また、オンライン診療を利用してよかったこととしても、感染対策以外に効率の面デメリットを感じている人が多いことがわかった(図4)。

図4 オンライン診療を利用して不満なこと MMD研究所より引用[3]

一方で、オンライン診療の不安な点や不満な点として、触診がないことや対応する医療機関の少なさを上げる人が多いことがわかった(図5)。

図5 オンライン診療を利用して不安な不満に感じたこと MMD研究所より引用[3]
モデルケースによる分析の結果

オンライン診療は移動・待ち時間の短縮だけでなく、金銭的・精神的な負担緩和、交通事故リスクの回避などのメリットがあることが分かった。

つくば市の地域分析の結果

人口の分布

図6 つくば市の人口分布

つくば市の人口は中心部に集中している。一方で北部や西部の人口は少ない。

高齢化率

図7 つくば市の高齢化率メッシュ

つくば市中心部やつくばエクスプレス沿線は高齢化率が低いことがわかった。一方で、北部は高齢化が非常に進んでいることもわかった。

病院へのアクセス性・公共交通へのアクセス性

図8 病院や公共交通へのアクセス性の分析

内科の病院・診療所に徒歩でアクセスできるエリアは限られていることがわかった。また、利便性の高い公共交通(平日片道34本以上/日の鉄道・バス路線)に徒歩でアクセスできるエリアはとても限られていることがわかった。

内科の病院または駅・利便性の高いバス路線の停留所が徒歩圏に無いエリアに住む人口は約112,904人と推定される。これは人口のおよそ半分を占める。特に北部や西部では通院のハードルが高いと言える。

提言

つくば市内の地域分析の結果を踏まえ、つくば市を4つの地域に分けそれぞれに適したオンライン診療の形を提案する(図9)。

図9 つくば市の4つの地域
センター・TX沿線エリア(図9 青色)

オンライン診療ならではの利点を生かした、ウェアラブル端末によるリモートセンシングシステムを提案する。

北部・南部エリア(図9 赤色)

高齢者のオンライン診療のハードルを考慮して、看護師が手伝う形態の訪問型オンライン診療を提案する。

広域エリア(図9 緑色)

モデルケースなどによる十分な宣伝をした上で、スマートフォンを用いた低コストなビデオ診療を提案する。

特定エリア(図9 黄色)

移動診療車の導入は効率上難しいため、最適なシステムの提案は難しい。画期的なシステムを考える必要がある。

レファレンス

  1. デロイトトーマツグループ 「コロナ禍での国内医療機関への通院状況・オンライン診療の活用状況」に関するアンケート調査結果を発表. デロイトトーマツ. (オンライン) 2020年8月17日
  2. 中央保健医療協議会 かかりつけ医機能等の外来医療に係る評価等に関する実施状況調査(その2)報告書(案)<概要>。中央保健医療協議会(オンライン)2019年11月15日
  3. MMD研究所 オンライン診療に関する調査 MMD研究所のウェブサイト(オンライン)MMD研究所、2020年11月30日
    https://mmdlabo.jp/investigation/detail_1902.html.
  4. MedionLife 【ボイスvo.2】患者ファーストな診療 オンライン医療の選択ができれば介護も仕事のバランスがとれる MedionLife.(オンライン)2020年10月27日(引用日: 2020年12月17日)https://medionlife.jp/interview14/.