課題
つくば市は、ラドバーン方式(1920年代にアメリカのニュージャージー州ラドバーンのニュータウン開発における歩車分離の計画手法)を参考にした計画都市で多くのペデストリアンデッキが存在している。通常のペデストリアンデッキでは、車道を横断する地点には陸橋や横断歩道が設置されている。しかしながら、つくば市では車道によってペデストリアンデッキが分断されてしまっている地点が見受けられる。そのため、このような場所を横断する歩行者は危険性が高いのではないかという問題意識から調査を行うことにした。
私たちはペデ分断地点の現状を理解したうえで安全性を高める提案を行うことを目的とした。
データ
ペデ分断地点の現状を理解するため、以下の調査を行った。
プレ調査
ペデ分断地点の観察を行った。
本調査
①現地調査
日時:2022年11月7日(月)7:00~9:00
目的:ペデ分断地点の現状の把握
方法:10分間隔でペデ分断地点の横断者の数と近くの信号の横断者の数の計測を行った。
②空間データ分析
Agoopポイント型流動人口データを用いて、ペデ分断地点及びその周辺での横断の発生状況を推定する。
③ヒアリング
つくば警察署:事故の発生の有無・現状の改善の検討有無の把握
筑波メディカルセンター病院:関係者の横断状況・ペデ分断地点の危険性の認識の把握
つくば市役所:ペデ分断地点の構造や改善の検討有無の把握
関東鉄道株式会社:自動車目線からの危険箇所の把握
分析
本調査
①現地調査
ペデ分断地点の横断者と近くの信号の横断者の数の比較と、どの時間帯の横断者が多いのか分析する。
②空間データ分析
ArcGISPro上で車道上にポリゴンを作成し、ポリゴンとポイントデータを空間結合し、その点密度を求め比較している。また横断を判別するために移動方向のデータを用いた。角度を四方に区分し、車道に沿う方向を車、直行する方向を横断として分析している。
③ヒアリング 筑波メディカルセンター病院、つくば警察署、つくば市役所、関東鉄道株式会社の4事業者にヒアリングを行った。
結果
プレ調査
歩行者が対向車線の車が見えづらい、自動車も反対側にいる歩行者が見えづらい、横断者のすり抜ける横断が多いといった問題点が見られた。ペデ分断地点は危険性が高いのではないかと考えられる。
本調査
①現地調査
横断者の数を計測することで、近くの信号よりもペデ分断地点の横断を行っている人が多いこと、8:00~8:20の横断者数が多いことがわかった。
メディカルセンターの第3駐車場を使う職員や患者、 通学に使う中学生や高校生の横断が多いことが分かった。
②空間データ分析
大学通りでは午前8時台に車の交通量が多く、ペデ分断地点でも渋滞が発生していると予想される。またペデ分断地点のみに注目すると、8時・12時・14時台に横断者が多いことが分かった。そのため車の信号待ちによる待機と横断が重なる朝の時間での事故の危険性が高いと予想できる。加えてペデ分断地点が横断に頻繁に利用されていることは周辺との比較より明らかであり、横断が常態化していると考えられる。
③ヒアリング ヒアリングにより以下の認識や意見が得られた。
・筑波メディカルセンター病院の職員・来院者駐車場の4か所が道路を渡らないと病院まで行くことのできない場所にあり、職員・来院者の多くが車で病院まで来ていることを認識している。
・ペデ分断地点の危険性は認識しており、横断歩道を渡って病院に来て欲しいと考えている。
・ペデ分断地点の横断は想定していないが、防ぐことは難しい。過去にこの地点で事故が発生していた。
・ペデ分断地点が自動車から視覚的に見にくい。カラー舗装などをした方が良いのではないか。
・ペデ分断地点へのカラー舗装の実施は難しい。
提言
①ペデ分断地点の横断を許容する提案 ペデ分断地点を歩行者が横断することを許容し、歩行者の安全性を高める提案である。具体的には路面のカラー舗装、自動車に対する注意喚起の看板の設置や路面舗装、歩行者に対し止まるよう掲示することなどである。これらは費用が安く実現性は高いが、渋滞悪化やこれだけで安全に渡ることができるか課題も多い。
②横断歩道の利用を促す提案 ペデ分断地点を歩行者が渡ることを許容せず、近くの横断歩道の利用を促す提案である。具体的には筑波メディカルセンターの第3駐車場のペデストリアンデッキ側出口の封鎖、横断歩道の利用を促す看板の設置、学校や筑波メディカルセンターへの横断歩道利用の呼びかけなどである。これらは歩行者の動線を誘導できるかが課題であるが、誘導が成功した場合、安い費用で歩行者の安全な横断が可能となる。
③都市計画を考えた中長期的な提案
筑波研究学園都市が建設されてからかなりの時間が経ち、ペデ分断地点周辺の商業施設などの建物も古くなっている。そこで、ペデ分断地点周辺地域の構造変化の機会を利用し、安全性と利便性の向上を目指す案を提案する。提案内容の内訳としては、駐車場・施設の再配置、渡り廊下の建設によるペデ分断地点周辺の立体的な空間利用、ペデ分断地点周辺道路の拡張・整備、バスベイの導入、自転車専用通行帯・歩道の整備・拡張等の歩行者動線の快適性やペデ分断地点周辺部のまとまり創出を促進するようなものとなっている。
レファレンス
[1]国土交通省都市局まちづくり推進課. ”居心地が良く歩きたくなるグランドデザインレベル-事例から学ぶその要素とポイント-”. 国土交通省. 2021. https://www.mlit.go.jp/toshi/file/useful/g-level2.pdf, (参照 2022-12-12).
[2]仙台市. “自転車通行空間における法定外表示ガイドライン”. 仙台市. 2021. https://www.city.sendai.jp/jitensha/documents/jitensyatuukoukuukannniokeruhouteigaigaidorain_r0303.pdf, (参照 2022-12-15)
[3]財団法人国土技術研究センター. “道路の移動円滑化整備ガイドライン”. 国土交通省. https://www.mlit.go.jp/road/sign/data/chap4.pdf, (参照 2022-12-15)
[4]国土交通省. “バス停留所安全性確保対策実施状況一覧表”.国土交通省. 2022. https://wwwtb.mlit.go.jp/kanto/content/000272308.pdf, (参照2022-12-12)
[5]鈴鹿市. “桜ヶ丘江島線横断歩道橋整備工事”. 鈴鹿市. 2015. https://view.officeapps.live.com/op/view.aspx?src=https%3A%2F%2Fwww.city.suzuka.lg.jp%2Fgyosei%2Fshinsei%2Fnyusatsu%2Fresult%2Fkoji%2Fdatas%2F4815_001.xls&wdOrigin=BROWSELINK, (参照 2022-11-17)
[6]建築プレミアム. “建築基準法 第44条 道路内の建築制限 – 建築プレミアム”. 建築プレミアム. http://best.life.coocan.jp/k-ho/ho03/02/ho_044.html, (参照 2022-12-26)
[7] 株式会社プラスPM. “道路上の渡り廊下はどうしたら実現するのか/ブログ/コンストラクション・マネジメントのプラスPM”. コンストラクション・マネジメント実績30年の株式会社プラスPM. https://www.plusweb.co.jp/blog/hospital-288.html, (参照2022-12-26)
[8] 兼松康. “埼玉・所沢に新たな集客拠点 文化施設と物産館が連携 – 産経ニュース”. 産経新聞. 2021. https://www.sankei.com/article/20210608-MUC3ZSSAWBIB3AIYIPFEWR66EI/, (参照 2022-12-26)