【2022年度5班】Sangaku De Gohans -持続可能な食事生活-

演習/連携
2023-02-10

課題

背景

新型コロナウイルスは、筑波大学の学食に大きな影響を与えた。第3エリアにおいてはコロナの影響によって3学食堂が閉店し、その他の店舗も休業した。筑波大学は2022年の10月から対面授業を再開したが、学食の営業形態はコロナ以前の状態には戻っておらず、復活した学食の需要に対応できていないというのが現状である。
このような現状は学生にとって列に並んでいる時間や昼食機会の損失、学食にとっては混雑により利用を諦める学生がいることから本来得られたはずの利益の喪失がある。このように双方にとって損失がある状態は持続可能ではないと考えた。

目標

我々は以下の3つの目標を設定した。
① 3A棟フードコートの混雑解消
② 学食の収益増加
③ 行きたくなる3食に

データ

予備調査

①現地調査

3A棟フードコートの混雑状況を定量的に把握するために現地調査を行った。
具体的には以下のことを行った。
目測による混雑箇所の把握
使用座席と設置座席の数を計算し、座席の占有率の計算

②アンケート調査

学生の学食に対するニーズを定量的に掴むためのアンケート調査を実施した。
調査方法:WEBアンケート
調査対象:筑波大学の学類生・大学院生
サンプル数:183
主な調査項目:
基本属性(学類、学年、性別)
行動特性(移動手段、支払い手段、授業数)
対面授業の全面再開に伴う食事場所と重視項目
2学食堂の弁当の利用頻度と印象
2学での弁当販売が開始された場合の消費額等

本調査

①ヒアリング

学食の現状の認識と試験的な弁当販売の実施可否に関して尋ねるために大学(学生生活課)と事業者(2食キッチン)に対してヒアリング調査を実施した。結果として合意形成がなされたため、二日間の弁当販売が可能になった

②弁当販売実験

上述した通り、試験的に3学食堂にて弁当を販売し、目標の達成に有効であるかを検証した。概要は以下の通りである。
実施期間:12月8日、9日 11:00~14:00
実施場所:3学食堂のカウンター
弁当販売実験と同時に以下の調査を行った。
1) 3学食堂の占有率調査
2) 各店舗の待ち時間調査
3) 弁当購入者に対するアンケート
  調査方法:選択式アンケート
  調査対象:弁当購入者
  主な調査項目:
   平日の昼食の食事場所(普段、当日)
   弁当を購入した理由
   モバイルオーダーやQR決済の利用意思
   3学食堂での弁当販売が実施された場合の利用希望頻度

分析

予備調査②の分析

学食に求められているものを分析する上で特に重要となるのが平日昼の食事に求めるものについて聞いた質問である。全体としては味や安さを回答した人が多かったが、複数回答による質問であったことから項目間に関係があると考えられる。そこで昼食のニーズを俯瞰的にとらえるため に主成分分析を行った。固有値が1以上であることを基準に得られた4つの軸に対してそれぞれ効いている軸から名前を付け、コスパ軸は味や安さ、いつでも軸は時間の自由度、急ぎ軸は早さや座席の空き具合、どこでも軸は場所の自由度がそれぞれ強い相関を示している(表1) 。これらの各主成分と対面授業の数との関係を分析したところ、いつでも軸以外の3つは対面授業が増えるほど相関が強くなることが分かった(表2)。安くて美味しいものはもちろんのこと、早く食べられて場所の制限を受けないものが対面授業の増えた今の学食に求められていることが分かり、これは学食の混雑解消を感がるうえでも重要な点である。私たちはこれが弁当の販売によって満たされると考え、3学での弁当販売に向けて動き出すこととなった。

結果

弁当販売を経て、以下の三つのデータが得られた。

①当日の売上

二日間の合計販売数が2食キッチンからの弁当の追加提供も併せて計190食、合計売り上げは約9万円となり、弁当のニーズの存在と、弁当による学食側の利益増加が見込めそうであることが確認できた

②学食内の混雑状況の変化

弁当販売を行う前と当日との3学食堂の座席の占有率の変化を調べた。結果として全体的な占有率は弁当販売日の方が高く、弁当販売は直接的に混雑緩和に繋がるものではないとわかった。一方でピーク時の占有率の値に大差がない、占有率の低かった時間帯での上昇幅が大きいことが分かった。同日に実施した食事提供までの待ち時間調査では弁当は待ち時間が他店と比較して1~3分ほど短いという結果が得られた。

以上より、弁当販売は学食の回転率の向上とより幅広い時間帯での学食利用者の増加に寄与することが分かった

③利用者の食事場所の変化

当日の利用者の食事場所の変化についてアンケート結果をまとめたところ、普段は学外で食事をとっているが当日は3学食堂で弁当を食べた利用者や、普段は食堂内で食事をとっているが当日は学内の教室や屋外で弁当を食べた利用者が一定数確認できた 。このことから、弁当販売は学食利用者の増加を促しつつ利用者の食事場所を分散化する効果が期待できる。

以上より、弁当販売によって以下のことがもたらされるということが分かる。
① 弁当により学食の収益が増加すること
② 販売における回転率の向上
③ 時間・場所を問わない食事の提供
④ 食堂外でも食べられることによる食堂内の混雑緩和

提言

3A棟フードコートを より良い学食にするために、大学・学生・事業者が相互に働きかけることを提言する 。

①学生の働きかけ

  1. 大学に学生のニーズを共有するために、大学に対して意見の提示をすること
  2. コロナにより学食の利用数が減少していることから、学内で昼食を購入すること

②大学の働きかけ

  1. 学生の学食利用数は増加しているが、コロナにより学食の座席増加が困難であるため、空き教室のような混雑を避けられる食事スペースを提示すること。
  2. 学生のモバイルオーダーなどに対する需要が大きいのに対し、事業者が負担費用をすることは経営状況を鑑みると困難であるため、モバイルオーダーの一括導入を行うこと。

③事業者の働きかけ

  1. 弁当販売は利用数増加・回転率向上・収益増加に寄与することが分かったが、特定の事業者に収益が偏ると予想されるため、各事業者が弁当販売を実施すること。
  2. コロナ禍における規制解除が早急になされるように、大学に対して規制緩和の要望を出すこと。

レファレンス

本演習を進めるにあたり、ヒアリング・弁当販売にご協力いただいた

学生部学生生活課厚生係 係長 奥村啓 様
学校福祉協会東北事業部筑波事業所 責任者 佐藤 正 様
                     竹山 様
アンケートにご協力くださった皆様

この場を借りて心より感謝申し上げます。

《参考文献》