【2023年度2班】 昼休みの3学食堂混雑してるの、なぁぜなぁぜ?-食堂の分析者(アナリスト)-

演習/連携
2024-06-01

1.背景・目的

2023年、新型コロナウイルス感染症が5類感染症に変更されると同時に、大学の授業にも変化が見られた。社会工学類開設科目(計88コマ)の授業形態の変化を調査した結果、2022年度から2023年度にかけて対面授業は2.8倍になり、一方でオンライン授業は半分以下に減少していた。
筑波大学3学食堂(図1)は、コロナ感染拡大期に営業停止後、席数を減らしていた。大学に来る学生数が戻っている一方、席の少ない状態が継続しており、昼休み時間帯は表紙の画像のように混雑が発生している。本演習で実施したアンケートでは、回答者の91%が3学で混雑を感じていることが分かった(図 2)。

図1 筑波大学3A棟及び対象食堂の地図
図2 3学食堂で混雑を感じているか

社会全体がアフターコロナへ移行している今、3学食堂も転換期を迎えている。転換期の混雑緩和を目指し、その後も見据えた3学食堂の新しい形を確立させるべきである。
本研究では昼休み時間の3学食堂において

① 人を分散させること
② 座席利用の効率化を図ること

の2点の実現による混雑緩和を目的とする。

2. 調査

2-1. ヒアリング

11月2日、3学食堂の現状や利用方針を把握し食堂混雑緩和方策案の実現可能性を探るため、食堂の管轄である学生生活課厚生係長 奥村様に対面でヒアリングを実施した。質問項目と回答は以下の通りであった。

Q1.食堂の座席数を増やすことの可否
A1. 可。椅子はコロナ前の個数に戻したいと考えてはいるが、椅子が平砂にあるため、運搬や掃除などの労力的に後回しになっている。

Q2.机・椅子の配置換えの可否
A2.可。

Q3.3学の食堂に新たに店を入れる計画の有無
A3.入れたいが目処は立っていない。
(メンテナンスなど時間を要する)

Q4.キャッシュレス決済の導入意向の有無
A4.大学側から店への強制は不可。店側の判断による

Q5.観測用定点カメラの設置の可否
A5. 可。ただしぼかし加工などを行い、個人の特定ができないようにすること

Q6.荷物置きのカゴの設置の可否
A6.カゴは手元にないので購入する必要があるが、便利だと思うので検討の余地がある。

Q7.丸善前の芝生にテラス席を設けることの可否
A7.否。そういう案もあるが3学での検討は厳しい。

Q8.旧食堂に音楽をかけることの可否
A8.否。誰もが使える場としては選曲の難しさもあり厳しい。

Q9.3A棟1Fの旧丸善のスペースのハイテーブルを使いやすい座席に変えることの可否
A9.否。好んで使う人もいるし、現在使用できているので優先順位は低い。

Q10.食堂にポスターや三角柱を掲示することの可否
A10.否。ごみが食べ物に入る可能性もあり、衛生面的に許可していない。

加えて10月30日-10月31日にかけて昼休みの食事目的の教室利用及び屋上利用の確認を目的とし、メールにてシステム情報エリア支援室の増田様にもヒアリングを実施した。質問事項と回答は以下の通りであった。

Q1.昼休みに教室を飲食スペースとして開放することの可否
A1.可。ただし「各自綺麗に使用する」ことを前提として呼びかけを行うこと。

Q2.3A棟屋上を昼食目的で利用することの可否
A2.否。危険防止の観点から立ち入りが規制されているので昼食目的の利用は厳しい。

その結果、定点カメラの設置、コロナで減少した椅子の増加、机の配置換え、教室誘導ポスターの掲示の許可を得られた。

2-2. 事前アンケート調査

現在の3学食堂利用者の実態を明らかにするため、アンケート調査を実施した。

調査方法:Webアンケート

収集期間:11/8-11/9

対象者:筑波大学学類生・大学院生・教職員

回答者数:61(有効回答数54)

図3 食堂で混雑を感じる理由(複数回答可)
図4 食堂の利用人数
図5 空き教室を利用したいと思うか

混雑を感じる要因として「席がない」と「人が多い」が最も多く挙げられ(図3)、食堂利用人数を1人または2人と回答した人が全体の68%であった(図4)ことから、少人数での利用が多いことがわかった。また回答者の70%が空き教室利用に積極的であることが分かった(図5)。
これらの調査より、人の分散(他スペース利用)と座席利用の効率化(机配置変更)は混雑緩和方策として効果が見込めると考える。

2-3. 介入実験内容

先述の仮定を実現させその効果を確認するため、介入実験を以下の通りに実施した。

日時:11月14日(火)-12月13日(水)
11:00~13:00
場所:旧3学食堂
撮影スケジュール:

11/14-:従来通り
11/21-:従来通りの配置で椅子増加
12/1-  :座席配置変更
12/7-  :座席配置変更のまま教室誘導のポスター掲示

介入は各項目を3日間ずつ行い、その様子を食堂内旧パン屋の天井付近に定点カメラを設置し撮影。介入前後での利用者数の変化を計測した。

1)従来通り
従来通りの配置図を図 6 に⽰す。

2 )座席数増加
感染症対策として間引かれていた椅子、計50脚を追加した。

3 )座席配置換え
少人数での利用に重きを置いた配置を考え、図7のように座席配置を変更した。机同士の間隔をあけ中央部分に座りやすくし、デッドスペース解消を図った。

4)空き教室誘導ポスター掲⽰
昼食をとる場所として空き教室が使えることの周知を目的に、食堂周辺の5ヶ所と3A棟2階の掲示板に3学食堂から近い教室(3A203,207,207,209など)が使用可能であることを伝えるポスター(図8)を掲示した。

図6 変更前の座席配置
図7 座席変更後の座席配置
図8 掲示した教室誘導ポスター
2-4. 介入実験結果

座席の占有率を把握するため、撮影した動画から5分おきに各座席を「空席」「着席」「荷物」に分析した。図 9より、利用者数のピークは11:40-12:00の20分間であった。椅子の増加後から座席配置換え後にかけて利用者が増え、ピーク時の占有率は約10%増加した。また、ピーク時間帯においてポスター掲示に効果は見られなかったが、椅子の増加においては介入前から26%、座席配置換えにおいては20%の占有率の減少が見られた。また図 10より、介入前よりも利用者数が増加していることが読み取れる。

図9 介入項目別座席占有率
図10 単位時間あたりの介入別座席利用用途
2-5. 事後アンケート調査

介入実験による利用者への影響を調べるためWebアンケート調査を実施した。

調査方法:Webアンケート

収集期間:12/12-12/13

回答者数:89
調査結果:

介入項目別による混雑感、席の座りやすさ、利用の快適性を5段階で調査した。混雑感について、配置換え後の混雑を感じる割合は介入前より70%減少したが、教室誘導ポスター掲示についての効果は見られなかった(図11)。席の座りやすさについては椅子を追加した時点で座りやすかったと答えた人が過半数を超え、座席配置換えによって約90%となった(図12)。一方快適性に関し、介入前に比べ椅子を追加したことによる快適さへの影響は30%程度だったのに対し、座席配置変更後に快適だったと回答した人は68.3%増加した(図13)。
また、これらのアンケート結果をもとに5段階評価で表したデータで一元配置分散分析(Tukey法による多重比較検定)を行った。混雑感、座りやすさ、快適さについての回答結果の分析をそれぞれ図 14、図 15、図 16に示す。* p < 0.05を有意差ありとする。混雑感の減少に関して座席配置換えは有効であった一方、椅子の増加とポスター掲示では有意性が見られなかった。座りやすさ、快適さの向上に関しては、座席配置換え、椅子の増加においては効果があったが、ポスター掲示による効果はなかった。
椅子の増加により利用できる人数が増え混雑感は減少したものの、椅子の密集が窮屈さに繋がった。しかし座席配置換えによって、混雑感だけでなく座りやすさや快適さも大幅に改善したと考えられる。

図11 昼休みの食堂で混雑を感じたか
図12 席に座りやすさ
図13 食堂利用の快適さ
図14 食堂の混雑感
図15 食堂の座りやすさ
図16 食堂の快適さ

3.追加実験

全ての施策を実施し、分析を終えた段階で議論を行った。教室誘導ポスターの掲示にほとんど気づく人がいなかったため、直接声をかけての周知が必要と考えた他、少人数の利用の場合空席がもったいないため相席が有効だと考え、12月13日の11:25-12:00に空き教室利用の周知と相席のお願いを行った。相席協力者へのヒアリングの結果、普段話さない人と話す経験ができて良かったという意見が得られた。一方で相席をする両者に話を通す難しさに加え、相席を好まない人もいるため誘導が最適解とは言い切れないという結論に至った。

4.考察

全ての介入を終え、最も混雑緩和に効果があったのは座席配置換えであった。中央の席利用が増加した他、椅子の追加で増加した窮屈さも配置変更で解消し、利用の快適性が向上した。相席誘導に関しては、混雑緩和の効果はあまりみられなかったものの、会話機会の提供・コミュニケーションの促進としては効果があった。本演習を通して、介入実験を行ったことで混雑感の減少とともに利用者の増加がおき、3学食堂はコロナ禍をあけて戻ってきた学生たちに対応した新しいかたちに変化したと考えられる。

5.より快適な3学食堂を目指して

3学⾷堂は今後も多くの⼈の利⽤が予想される。
より快適な3学⾷堂の実現のために以下の4つを提案する。

① 座席配置換えの継続
② ポスター掲示場所の工夫や別媒体によるより効果的な空き教室利用の周知
③ 昼休みの時間延長と3限体育の撤廃によるピーク時間の利用者数分散
④ 「相席OK」の札や可動式パーティションの設置による相席のしやすい空間づくり
これらの施策を講じることで、本演習の目的として掲げていた人の分散と座席利用の効率化を図ることができ、より快適な食堂に近づくと考える。

6.まとめ

3学食堂では、コロナ禍による規制及び規制解除による対面授業の数のリバウンドにより対応が間に合わず、混雑の要因となった。
そのため本研究では3学食堂の混雑緩和及び快適さを求めることを目的とした。
3学食堂の混雑について、アンケート調査を行うことで現状を把握することができ、これらの問題点に関しては、3つの介入実験を行うことで問題解決への手がかりを調べることができた。
結果、席の増加及び配置換えは混雑緩和と快適さの有益であることが分かった。
今後の展望としては、空き教室の利用者数の増加や相席による回転率の上昇が必要だと考える。

編集後記

当初我々の班は、コンビニ前などに人がたむろすることで感じる潜在的な不安をテーマとした研究を行おうとして、調査の難しさから断念して現在のテーマに変更したという経緯がある。そのため他班より短い期間で研究をすることになり苦労した面もあったが、無事に発表に至ることができ、大きな達成感を得られた。対果が見られなかったポスター掲示に代わり空教室、相席誘導を試みるなど臨機応変に対応できたことが達成に繋がったと考える。一方至らぬ点として観測カメラの設置ミスや、席の配置が他の学生によって勝手に変えられるなどの予想外の問題が起き対応に追われたことがある。日程の変更や実験の周知によって対応したが、今後実験を行うときはミスを無くし、起きうる問題を先読みして対策しなければならないと実感した。
紆余曲折あったが、食堂内の混雑緩和に貢献できた事を嬉しく思う。

参考文献

参考文献

[1]  筑波大学,筑波大学キャンパスマップ,
https://www.tsukuba.ac.jp/campuslife/support-campus/pdf/campusmap.pdf
(最終閲覧2023.11.11)

[2] 京都大学新聞.新年度 昼休み15分延長 食堂の混雑緩和のため.
https://www.kyoto-up.org/archives/3155(最終観覧2023.12.16)

[3] 京都大学新聞.来年度以降も昼休みは75分 21年からの措置 継続へ.
https://www.kyoto-up.org/archives/7095(最終観覧2023.12.16 )

[4] 東京工業大学.学士課程授業時間割表.
https://www.titech.ac.jp/student/students/life/undergraduate-timetables (最終観覧2023.12.16 )

[5] 横浜国立大学.授業時間割.
https://www.ynu.ac.jp/campus/schedule/class.html(最終観覧2023.12.16 )

[5] 九州大学工学部エネルギー科学科.時間割・シラバス.
https://www.energy.kyushu-u.ac.jp/students/syllabus/  (最終観覧2023.12.16 )